SOARISTO工房 Logo
HIDバラストのハイワッテージ化
(2/2)
'03/06/15初版,'04/06/21更新

[おまけ1] “HIDバラストのフェイルセーフ機能”

 KOITO製HIDバラスト(ヘッドランプコントロールコンピュータ)は、異常を検出した場合、つぎのようなフェイルセーフ動作を行います。(なぜ知っている?)0xF9C7

状 態内 容
出力異常検出時(ショート・オープン・リーク検出)およびバーナー(バルブ)点滅 出力電圧に異常が発生した場合またはバーナー(バルブ)の点滅症状が60秒以上継続した場合には、ヘッドランプの点灯を中止し、電源を再投入(ヘッドランプスイッチON→OFF→ONまたはイグニッションスイッチON→OFF→ON)するまで、その状態を継続します。
入力異常検出時 入力電圧が作動電圧(9~16V)より外れた場合は、ヘッドランプの点灯を中止し、作動電流範囲に戻り次第ヘッドランプの再点灯を行います。ただし、点灯後に入力電圧が低下した場合には、点灯維持限界電圧(6V以下)になるまで点灯を継続します。
ランプ電圧異常検出時 ランプ電圧異常が検出された場合には、ヘッドランプの点灯を中止し、電源を再投入(ヘッドランプスイッチON→OFF→ONまたはイグニッションスイッチON→OFF→ON)するまで、その状態を継続します。

[おまけ2] “出力電力の調整方法”

 今回のDIYでは、半固定抵抗をHIDバラスト内部に設置したため、車両への取付後は、出力電力を調整することができません。
(出力電力は、一度設定してしまえば、めったに調整するものではないため、この仕様で良いと思っていますが。)

 つぎのようなパーツを用いることにより、出力電力を任意に調整できるようになります。
(いきなり高出力で点灯すると、バラストが破壊(バーナーが破裂)する恐れがあるため、必ず出力電力を調整できるようにしてください。)

[写真13]
high_wattage13.jpg
  • (写真13左)は、ボリュームで、(写真13右)は、ロータリースイッチです。
  • 左右のバラストの出力を同時に調整する必要があるため、いずれも2回路のものを使います。

 HIDバラスト内部に設置した半固定抵抗を、ボリューム(またはロータリースイッチ)に換え、運転席周辺に取り付けることにより、走行中でも手元で出力電力を調整することができます。

 ボリュームは、調整軸を回すことにより抵抗値が連続的に変化するため、HIDランプの明るさを滑らかに変化させることができます。
(ただし、調整軸の固さは割と柔らかめなので、走行中にうっかり触れて突然高出力になってしまわないよう、取付場所をうまく選ぶ必要があります。)

 ロータリースイッチは、調整軸を回すことにより抵抗値を段階的に変化させることができるため、HIDランプの明るさが現在どの程度になっているのか、直感的に把握することができます。
(調整用の抵抗を、設定したい出力電力に応じて選定し、ロータリースイッチの接点間にハンダ付けします。写真は12接点(12段階に調整可能)のものです。)

 HIDランプの明るさを、リニアに変化させたいか、カチッカチッと変化させたいか、好みに合わせて選択します。0xF9C6

[おまけ3] “引き込み線切断時のバイパス回路”

 ボリューム(またはロータリースイッチ)を運転席周辺に取り付けるため、車両前方に設置したバラストから室内まで、配線を引き込むことになります。ここで、この引き込み線が何らかの原因で切断されてしまった場合、バラストの出力電力はどうなるでしょうか。

   引き込み線切断→基準抵抗∞(無限大)→最大電力

となり、バラストが破壊(バーナーが破裂)する恐れがあります。
(実際には、バラストのフェイルセーフ機能が働くため、破壊する前に出力が停止する、と思われますが。)

 そこで、つぎのようなバイパス回路を組み込むことにより、引き込み線の切断によるバラストの破壊を未然に防ぐことができます。

[図4]
high_wattage_fig04.jpg
  • バイパス回路のブロック図です。(図4)

 通常の場合には、介入ポイント間の抵抗(基準抵抗)Rは、内部保護抵抗Rintと外部可変抵抗Rextとの合成抵抗(Rint+Rext)となります。
(内部保護抵抗Rintは、バラストが最小出力(25W程度)となるような値に取っておきます。)

 引き込み線が切断された場合には、自動的に外部可変抵抗Rextがバイパスされ、基準抵抗Rは内部保護抵抗Rintのみとなり、バラストは最小出力となるよう制御されます。

 HIDバラストのハイワッテージ化を行う場合には、ここまで考えないと、本当の意味でのフェイルセーフとは言えません。0xF9C5

[おまけ4] “フォグランプへの組込”

 HIDバラストのハイワッテージ化により、劇的な光量を得ることができました。この光を活かしきるためには、光の利用効率の高いランプユニットが必要となります。

 今回は、発売当時から気になっていた、PIAAさんの「コバルト・スーパーH.I.Dターボジェクター」を使うことにしました。PIAAさんのキャッチコピーでは、「世界最高で最強のランプマシン」となっています。

 フルセットをまともに買おうとすると、\148,000もしてしまいますが、今回は、セットに含まれるバラストやハーネスは不要です。そこで、“とあるルート”を使って、プロジェクター本体のみ(バーナー、取付ステー含む)を入手しました。

[写真14]
high_wattage14.jpg
 
[写真15]
high_wattage15.jpg
  • ちなみに、これはPIAAさんの「プロジェクターフォグランプ 959」です。(写真15)
  • 前車SOARER(JZZ30)に付けていたものです。
    (職人は、妙に物持ちが良かったりするのでした。)
  • ブルーのレンズから、イエローの光を放ちます。
  • 発売当時は、「世界最強のプロジェクター」というキャッチコピーでした。
 
[写真16]
high_wattage16.jpg
  • プロジェクター本体を分解したところです。(写真16)
  • レンズには、バーナーからの光が上半分に拡散しないよう、半月型の遮光板が取り付けられています。
  • リフレクターは、つるんとした形状をしており、グレア光(黄色い光)を防ぐ対策はされていません。
  • また、レンズとリフレクターとの隙間がかなり開いており、この部分から漏れた光はハウジングに当たり、熱として失われてしまっています。

 「世界最高で最強のランプマシン」となっていますが、いざ分解してみると、まだまだ改良の余地がありそうです。0xF9C5

[写真17]
high_wattage17.jpg
  • プロジェクター本体を加工したところです。(写真17)
  • まず、レンズ手前の遮光板を取り外し、バーナーからの光をすべて前方に投射できるようにします。
  • つぎに、ポリカーボネイト製のミラー板を210mm×45mmの大きさに切り出し、ハウジング内部に挿入します。
    (ポリカーボネイトの耐熱温度:約150℃)
  • これにより、リフレクターとレンズとの隙間が無くなり、光の利用効率がさらに高まります。
  • さらに、撮影照明用の「コンバージョンフィルム」(後述)をφ54mmの大きさに切り出し、レンズに組み込みます。
    (コンバージョンフィルムの耐熱温度:約130℃)
  • これにより、ハイワッテージ化によって低下してしまった色温度を補正することができます。
 
[写真18]
high_wattage18.jpg
  • 「ノングレア加工」を施したバーナーをリフレクターに組み込んだところです。(写真18)
  • 加工前は、セラミックチューブの茶色い部分が反射して見えていましたが、加工後は、完全に消えています。
 
[写真19]
high_wattage19.jpg
  • (写真19左)は、レンズに組み込んだ「コンバージョンフィルム」です。
  • 元々は、カメラ撮影の際の照明光の色温度を補正するためのものです。
  • 今回は、色温度をx,xxxK高めるフィルムを使いました。
  • (写真19右)は、「ノングレア加工」を施したバーナーです。
  • 今回は、耐熱スプレーを使ってシルバーに塗装しました。
  • セラミックチューブだけではなく、台座の一部も塗装してあります。
 
[写真20]
high_wattage20.jpg
  • バラストとコネクタとの間のコードを延長加工したところです。(写真20)
  • ターボジェクターを純正フォグランプの位置に固定するためには、バラストをリインホースメントに取り付けることになりますが、バラストから出ているコードそのままでは、微妙に長さが足りません。
  • そこで、住友電線さんの耐圧30,000Vの高圧ケーブルを使用し、コード長を約42cmに延長します。
  • さらに、漏電対策とノイズ対策のために、コードをステンメッシュで覆い、タイラップできちんと結束しておきます。
  • なお、コネクタは、ターボジェクター専用の防水パッキンが付いたものに交換してあります。
 
[写真21]
Now Making
  • バラストをリインホースメントに取り付けたところです。(写真21)
  • 雨滴が直接掛からないところに、コネクタの接続位置が下向きになるように取り付けます。
 
[写真22]
Now Making
  • プロジェクターを取り付けたところです。(写真22)
  • 瑠璃色のレンズから、蒼白の光を放ちます。
 
[写真23]
Now Making
  • プロジェクターを点灯させたところです。(写真23)
 
[写真24](マウスカーソルを画像の上に!)
Now Making
  • 夜間のフロントマスクです。(写真24)

 ハイワッテージ化したHIDバラストと加工したプロジェクターランプとを組み合わせることにより、数100m先の標識でもはっきりと認識することができる、まさに理想的なドライビングランプを作り上げることができました。
(ただし、絶対的な光量と配光パターンが変わっているため、対向車に眩惑を与える可能性があり、公道上での使用はできなくなります。)(後述)

 C.A.風にいうと、
   「高速湾岸線で、背後からもの凄い光量の複眼ARISTOが迫ってきたら、速やかに道を空けてください。」
という感じになるでしょうか。0xF9C7

[おまけ5] “前部霧灯に関する基準”

 “闇雲”に光量だけを追い求めても賢くないので、念のため、前部霧灯(フォグランプ)に関する基準を確認しておきましょう。

道路運送車両の保安基準(抜粋)
昭和二十六年七月二十八日運輸省令第六十七号
最終改正:平成一五年七月七日国土交通省令第八一号

(前部霧灯)
第三十三条 自動車の前面には、前部霧灯を備えることができる。
 2 前部霧灯は、灯光の色、明るさ等に関し告示で定める基準に適合するものでなければならない。
 3 前部霧灯は、その性能を損なわないように、かつ、取付位置、取付方法等に関し告示で定める基準に適合するように取り付けられなければならない。

 
前照灯等(前部霧灯含む)に関する基準
 
  1. 同時に3個以上点灯する構造のものでないこと。
  2. 射光線は他の交通を妨げないものであること。ただし、3.および4.に示す取り付け位置以外に前部霧灯が取り付けられている場合は、下記の眩惑防止基準が適用されるものとする。
  3. 照明部の上縁の高さが地上0.8m以下であって、すれ違い用前照灯の照明部の上縁を含む水平面以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること。
  4. 照明部の最外縁は、自動車の最外側から400mm以内となるように取り付けられていること。
  5. 灯光の色は白色、又は淡黄色であり、その全てが同一であること。
  6. 前部霧灯は左右同数であり(前部霧灯を1個備える場合を除く)、かつ前面が左右対称である自動車に備えるものにあっては、車両中心面に対して対称の位置に取り付けられたものであること。
  7. 取り付け部は、照明光線の方向が振動、衝撃等により容易にくるわない構造であること。
(平成17年11月22日以降生産される車は上記のみ適用)
 
眩惑防止基準
 
上記取り付け範囲外のもので平成17年11月22日までの生産車は下記の旧基準でもよい。
  • 同時に3個以上点灯しないこと。
  • 光度は10,000cd(カンデラ)以下であること。
  • 主光軸が前方40m以上照射するものは、前照灯を減光、又は下向きに変換した場合点灯しないこと。
  • 主光軸は下向きであること。
  • 主光軸は右外側線より右方の地面を照射しないこと。
  • 灯光の色は白色、又は淡黄色であり、その全てが同一であること。
  • 前照灯(4灯式前照灯は副走行ビーム)の中心を含む水平面以下であること。
  • 取り付け部は、光軸の方向が振動、衝撃等により容易にくるわないこと。
 

←1/2へ

  
UpBack